大宇陀礼讃

 今年の四月、私は奈良県宇陀市大宇陀(旧大宇陀町)に越してきたが、どれだけ大宇陀が良いところであるかをここに書きたいと思う。
 

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※住んでまだ一年も経っていないので事実誤認があるかもしれない。一新米移住者の正直な感想と取ってもらえれば幸いである。
 
立地の妙
 大宇陀は、開発された地方都市(桜井市)と険しい山間部(奈良南部)との中間に位置しているため、暮らすのに丁度よい中山間地域である。同じ宇陀市内の、隣る榛原町には近鉄の駅もあって、友人に榛原駅まで来てもらえれば、約15分で車で迎えに行ける。この、特急さえ停まる榛原駅があることで、大宇陀は無用な開発を免れているとも考えられる(過去には大宇陀にも線路を引く計画はあったらしいが)。
 
地形の妙
 大宇陀は、山々に囲まれているが、南部のように山が切り立ちすぎてはおらず、小高くなだらかな山々の麓に、田畠を営める土地も拡がっている。つまり、程よく山が近くにあることで、空は広く、明るい農村風景が形成されている。夜にはきれいな星空が見られる。
 
気候の妙
 大宇陀は、冬の寒さにさえ目をつぶれば、快適な冷涼地である。なかでも夏の大宇陀は素晴らしく、クーラー要らずで、熱帯夜になることはほぼない。冬にしても、寒いとはいえ大雪が降るということは殆どないと聞くし、その冷え込みによって野菜が旨くなるという佳所もある。
 
土地柄の妙
 大宇陀は、地区ごとに幾らか差はあるものの概して保守的な土地柄であるためか、各地の先進的な取組みに追随せず、目立った地域活性化策も講じられていない。田畠ではやや惰性的に農耕が営まれ、若年層は町外に流れ、人工林は荒れ、空家と耕作放棄地が散見されるところだ。見ようによっては、この保守性はマイナスに捉えられるかもしれないが、それによって浮ついた取組みや移住者が淘汰されているという面があって、その点すこぶる好感が持てる。そしてもちろん、親しくなれば大宇陀の人は本当に良くしてくれる。
 
町のつくりの妙
 大宇陀には、その中心部に松山という昔の城下町がある。そこは重要伝統的建造物群保存地区に指定されるほどに、今も町屋の多く残る一画で、そうした昔ながらの景観をした「街」が、山や田畠とすぐ近くにある。このコンパクトな町全体のつくりが人間の身の丈に合っている。ちなみに、かつて賑わっていたという松山は現在多くの商店がなくなってしまっているが、古民家を利用してあらたに店を始める人も増えてきており、徐々におもしろくなってきている。
 
 
 田舎への移住を志して以来、私は様々な地域を経めぐり候補地を探したのだが、大宇陀には、初めて訪れたその時からどこか惹かれるものがあった。何度か通う内に、その感覚は確かになり、移住するならここにしようと決めていた。
 実際に住んでみて、大宇陀は思い描いていたとおりの土地であった。上に挙げた天地人の要素どれもが私にはもってこいで、移住先を大宇陀にして本当によかったと思っている。
 以上、私の感じている大宇陀の素晴らしさを書いてみた。興味を持たれた人は一度訪れてみてほしいし、現在どこか地方への移住を考えている人は、大宇陀も選択肢のひとつとして検討してみてほしい。
 
 
移住に関する余談
 やや余談になるが、移住先を検討する際、私は「言葉」という要素も重要視していた。なぜなら、同じ日本とはいえ、各地に方言があり、東と西とでは発音も大きく異るという点で、地域間にはやはり言葉の壁があると思うからだ。私などは、生まれも育ちも大阪であるためか、たとえば関東圏の言葉には違和感(ときに嫌悪感)を感じることがある。言葉は日常的につかうものなので、移住先としては、言葉の壁によるストレスが少ないであろう関西圏という括りをあらかじめ設定していた。尤もこれは、心が狭い私だけの問題かもしれないが、地方移住を考えている人の一助になればと思う。